衆議院選挙の投票所のある雷山コミュニティセンターに行くため、少し早起きしました。そこで、投票を済ませた後、前から気になっていた雷山千如寺大悲王院(らいざんせんにょじだいひおういん)へ向かうことにしました。
さあ、雷山千如寺大悲王院へ
神秘的な景色と秋風を感じながら…
道中はゆるやかな登りが続き、少し疲れたものの、一方で心地よい風と自然の景色が気分を和らげてくれます。そして雷山千如寺大悲王院に到着すると、曇り空の中に佇む大悲王院の姿が見え、そこには期待以上の美しい景色が広がっていました。そこで、鳥たちのさえずり、静かな川の流れ、紅葉の色づき始めた葉が見事に調和し、その瞬間、道中の疲れがふっと消えていきました。曇り空が境内に静かな荘厳さをもたらし、雷山千如寺大悲王院には、さらに神秘的な雰囲気が漂っていました。
雷山千如寺大悲王院、秋の愁
境内をゆっくりと散策しながら、その風景を写真に収めました。曇り空の柔らかな光が紅葉や緑に溶け込み、撮る写真すべてが心に残るようなものばかりでした。そして、雷山千如寺大悲王院に訪れたことで、息抜きでき、素晴らしいひとときを過ごせました。
ともあれ、帰りの身支度をしながらベンチで休憩をしていた時のこと…
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秋の日の雷山千如寺での出会い
観音様がくれた愛のかたち。
色づいた紅葉の下にある古びた木製のベンチに腰掛け、カメラや荷物の整理をしていた時、木々の間から小鳥たちのさえずりが聞こえてきた。秋の澄んだ空気の中、心地よい調べが耳に届く。ふと、70歳前後の老夫婦が近づいてきた。女性の方が笑顔で、楽しそうに男性に話しかけている。その笑顔は、長い年月を共に過ごした温かさと愛情を滲ませていた。
男性は微動だにせず、口を一文字に結んでいる。妻の話を聞いているのかいないのか、傍目には分からない。しかし、時折、小さく頷いているのが見て取れた。その表情は硬いながらも、長年連れ添った妻への深い愛情と、尊敬の念を確かに湛えている。彼らは古風な服装で、どこか昔ながらの夫婦といった風情だった。男性の背中は少し丸まっており、長年の労働と責任を背負ってきた歴史が刻まれているようだった。女性はそんな彼を支え続け、その愛情で彼の心を温め続けてきたのだろう。おそらく、口下手で、感謝の気持ちを表すのも得意ではないのかもしれない。
懐が深い不器用な優しさ
あっ、女性がつまずきそうになった。夫が咄嗟に手を伸ばし、しっかりと支えている。さっきまで硬かった男性の表情が、一瞬にして優しいものに変わった。「危ないじゃないか。よく下を見て歩かないと…。」その時、女性の手はしっかりと夫の手を握っており、道路に膝をぶつけることはなかった。女性は足元を見て、「あー危なかった…。こんなところに凹みができてるんだもの…。」と呟いた。夫は「大丈夫か…」と妻に確認し、妻は「あーびっくりした」と苦笑いした。夫は「ほら、ここ座りなさい」と妻に言って、二人は近くのベンチに腰を下ろした。
私は、荷物整理を終えて出発しようかと思ったが、この老夫婦がなぜか気になった。荷物からもう一度カメラを取り出し、手持ち無沙汰に弄んでいるふりをした。きっと、両親二人とも亡くしたことで、重なる部分があったのかもしれない。女性は少しかかとをひねったのか、抑えている。男性が「あーもう大丈夫かぁ?」と心配そうに覗き込むように見ている。
そこで「ちょっと待ってなさい」と言い残し、男性は席を立った。
秋麗と老夫婦の旅路
数分後、男性は小走りで戻ってきた。手には水で濡らしたハンカチを握りしめている。「これで冷やしなさい」と、少し照れくさそうに妻に手渡した。「あっありがとう」と、女性は少し涙ぐんでいるような声だった。すると、女性が「あのね、もう大丈夫、うん、大丈夫」と言った。その後、大事そうにハンカチをバッグに入れた。その時の女性のはにかんだ笑顔が印象的だった。女性はすっかり元気になり、また談笑を続けた…。その傍でうんうんと頷く男性がいた。
なんだか、女性に怪我がなくてほっとした自分と、旅の思い出に残る出来事を観音様にいただいたようだった。境内には、相変わらず小鳥たちのさえずりが響き渡っている。秋の日の穏やかな光が、すべてを優しく包み込んでいるようだった。
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