人生の終焉は、新たな始まりへの扉。母の最期の願いは、その始まりの場所への帰還でした。北九州の海を見守るように鎮座する和布刈神社。幼い頃から幾度となく家族で訪れた、私たちにとって特別な場所。その海に、母の魂を還す日が来るとは、人生とは何と不思議な巡り合わせでしょうか。

和布刈神社で海洋散骨

古くは神功皇后も訪れたと伝えられる由緒正しきこの神社は、毎年元旦に行われる和布刈神事で知られています。海との繋がりが深く、航海の安全や大漁を祈願する人々から篤く信仰されてきました。母は生前、「いつか海に還りたい」とよく話していました。故郷の海を愛し、その力強さ、優しさに包まれたいと願っていたのです。病床で弱っていく母の手を握りながら、私はその願いを必ず叶えると心に誓いました。そして、母の故郷とも言えるこの和布刈神社の海こそが、その最期の場所にふさわしいと確信したのです。

海洋散骨とは?

海洋散骨とは、故人の遺骨を粉末状にして海に散布する供養方法です。祭祀の目的で行われ、自然に還るという故人の意志を尊重して選択されることが多いです。そして、海洋散骨には、船舶やヘリコプター、セスナ機などを使用する方法があります。また、海洋散骨を行う際は、周辺住民や自然環境への配慮が大切です。散骨の場所には、地域に精通した散骨業者に依頼するのがよいでしょう。

導きの神様が鎮座する和布刈神社

けれども、現実はそう簡単ではありませんでした。大切な人を失う悲しみ、手続きの煩雑さ、そして何よりも、母との永遠の別れを受け入れることの難しさ。様々な感情が押し寄せ、心が押しつぶされそうになる日々でした。そして、和布刈神社の社務所で海洋散骨の手続きを行いました。神職の方は、私の気持ちを丁寧に受け止め、厳粛な態度で説明してくださいました。必要な書類、散骨の方法、当日の流れなど、細部に至るまで丁寧に説明していただき、不安な気持ちが少し和らぎました。

心の故郷で叶えた母の遺骨

そして、ついにその日が来ました。澄み渡る青空の下、静かに波打つ玄界灘。和布刈神社の神職の方々の祈りの中、母の遺骨はゆっくりと海へと還っていきました。風が優しく母の髪を撫でるように吹き、波音が子守唄のように響きます。その光景は、まるで母が海に抱かれ、安らかな眠りについたようでした。

その瞬間、私は深い悲しみと共に、感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。母の願いを叶えられたこと、そして何よりも、母と過ごしたかけがえのない日々への感謝。母は確かにこの海に還り、私たち家族の心の中で永遠に生き続ける。そう確信しました。

導きの神様が鎮座する和布刈神社

和布刈神社は、私たち家族にとって、単なる神社ではありません。それは、母との大切な思い出が詰まった、魂の故郷なのです。これからも、この場所を訪れるたびに、母のことを思い出すでしょう。そして、いつか私も、母の待つ海へと還っていくのかもしれません。

大切な人を亡くされた方、故郷を遠く離れている方、和布刈神社の海は、きっとあなたの心を癒してくれるでしょう。ぜひ一度、訪れてみてください。

和布刈神社へのアクセス

住所:福岡県北九州市門司区門司3492番地

自動車:門司港駅より車で約7分 / 九州自動車道門司港ICより約5分 / 北九州都市高速道路春日ICより約10分

西鉄バス:74 門司港レトロ4番乗り場 ⇔ 和布刈神社前

電車:JR門司港駅より徒歩約25分 / タクシー 約7分(料金1,000円以内)

ウェブサイト:https://www.mekarijinja.com/